12月の講座は精進のおせち料理です。豪華絢爛なおせち料理にも憧れますが、こんなシンプルもいかがでしょう。
○お煮しめ
○黒豆
○精進松風焼き
○昆布巻き
○きんとん
○たたきごぼう
 今回のポイントは、お煮しめの飾り切り、きんとんを色よく滑らかにするには、黒豆を黒くふっくら仕上げるには、などでした。おせち料理と言えば、エビを始めとし魚介類を景気よく使用し、エビ=腰が曲がるほど長生きするようになど、それぞれに意味があってあえて新年に食べられるものですから、わざわざ精進の食材で作る必要がないものは作らず、野菜や豆を使った品を作りました。松風焼きは通常鶏挽肉を使いますが、この日は長芋とおからを用いました。作り方は挽肉に置き換えれば同じですので、おうちでは本来の松風焼きを作っていただければと思います。
 今日はおひとり様用ワンプレートに盛り付けました。きんとんは赤大根と共に寒椿に見立てて盛り付けました。赤と黄色がとても鮮やかに映えました。そしてこのお皿は、10月の台風19号で甚大な被害を受けた長野市赤沼地区の友人宅の蔵の2階に大切にしまってあった大正時代のものです。昔は自宅で婚礼をしていた事が伺える、鶴や松竹梅のお皿やお膳などの漆器が沢山あり、友人のお母さんは、もう使わないし蔵を解体するから好きな物を持って行ってくれたら嬉しい、と言って譲ってくださいました。被災して2ヶ月、大変な時もとても前向きで愚痴をこぼさず、80過ぎても謙虚に働かれている友人のご両親に、私の方が励まされ元気を頂くばかりか、こうして歴史ある道具を託してくださって、感謝しかありません。二つ返事で頂いて、こうして早速に使わせていただいています。大正10年の新聞に包まれた食器が、100年近く経て令和の時代のお料理を飾ってくれています。お皿もこのお家のご先祖さまもさぞ驚いていることでしょう。大切に使わせていただいています。